午後、S夫人が本の返却と手料理のオカズ差し入れに来訪。多岐にわたる話に花が咲いた。
「生きていることと死ぬということの差は一体何なのだろう?」
S夫人は、「美術館に行き、映画館に行き、美しいもの感動したり、泣いたり笑ったりする・・・こういうことが生きているということだなぁ」と最近思うようになった、と話してくれた。亡くなった人とはこの感情を共有することができないのだ。頭の中ではできても・・・・
本棚の中に彼女が読んだであろう岸本英夫の「死を見つめる心」を先日読んだことを思い出した。そこで著者は、生命飢餓状態という定義をして死を目前にした時の生きたいという欲求からくる恐怖について語っている。確かに、「死とは」、という一般論をはるかに超える厳しさで死ということと対峙しなければならない。その時どんな折り合いを心の中でつけるのであろうか?岸本氏は生命という一つの実体、死というもう一つの実体、この2つがあるだけで、人間が生きているということは生命という実体の上でのみあることで、死とは生命に対する「別れの時」。だから立派に最後の別れができるように平生から「一日、一日を良く生きる」よう努めていればよいのだ。それが心の準備につながる。
彼女はそこをどう乗り越えることができたのだろうか?見事に最後まで明るく、朗らかで、見事に毎日を楽しく生き切ったように思う。夜もそれほど悶々として眠れなかったという話は余り出なかった。勿論入院中は眠れない、と睡眠薬を貰ったりしていた。退院してからも睡眠薬は貰ってあったが減り方は少なかった。彼女の心の中の葛藤とそこをどう突き抜けたのか今となっては聞きただしようがない。判らない。だが凄い生き方だったと今更ながら感心してしまう。今の自分にはできそうにない、ことだけは確かだ。
彼女はしかし、この本は合わないと、生前S夫人に言ったとのことだった。昨日初めて聞いた話だ。
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